鼻にかかった郷土弁を聞いていながら、故郷の小学校のことなぞを考えていた。
「全くわれわれの第一の欠点というのは、口が重くていけないということですよ。お互いに黙っていてはだめです。あの重い東北弁をできるだけ早くすてて、思ったことをどんどん弁じ立てるのでなくちゃあ、これからの世の中では成功はしません。ことに商売人になりますとな」
彼はそれとあてつけてかどうか、そんなことまで言いだした。傍で聞いていた私はカッとなった。けれども青年は前と少しも変わらぬ態度で、「はあ、そうでしょうな。私なぞも口が重いので、どうも不自由で困ります」と皮肉でもなんでもなく答えた。
「全くですよ。私なぞは学問のつもりで東京弁を勉強しました。おかげさまでどうやらI」
私はもう湛えられなくなった。それで一つには青年を救援するという考えで、わざと憎らしげにこう抑えた。
「でも鼻にかかるのだけはなおらないとみえますね」