#author("2024-04-11T09:24:49+09:00","default:kuzan","kuzan") [[横溝正史]] 当時は、まだ太宰治の「斜陽」は書かれておらず、したがって斜陽族とか斜陽階級などということばは、この事件のばあい使われていなかったが、もし「斜陽」がすでに書かれていたとしたら、おそらくこれは、斜陽階級ということばが使われた、第一号の事件となったであろう。 タイプライター 「なるほど、道理で[[上方なまり]]があると思った。京阪神にもいましたか」 「ところが、それは知らないんです。岡山県と広島県ばかりです。 [[関西弁]]がしだいに多くなっていくのは、おかみの囗のほぐれていく証拠である。 それまでお小夜は神戸にいたわけですわ。それからすぐ上京したとしても、お小夜にはどこか[[上方なまり]]が残っていなければならぬはずです。ところが菊江にしろお種にしろ、みじんもそんなところはありませんからねえ」 「そりゃああなた、十年以上も東京にいれば訛りだって抜けまさあ。それも一人前の人間になってからだと無理かも知れませんが、十一や二で東京のものになってしまえば、生っ粋の東京人とかわりゃしませんよ」 「それもそうですが、しかし、名詞の[[アクセント]]というやつは、なかなか改まらないものなんですがね、たとえば蜘蛛と雲、橋と箸と端、こういう言葉のアクセントは、関東と関西じゃまるで反対になっているんです。ところが、いまあの家にいる連中で、それが違うのは三島東太郎だけなんですがね」 「ああ、あの男は岡山だというから。……しかし、それだって長く東京にいれば変わって来ますよ。ことに菊江は花柳界にいたのだから、やかましく注意されて改めたのかも知れない」 巡査部長はかなり正確な[[標準語]]を話した。 「いや、あれは東のほうのひとだすな。声は低おましたが、歯切れのええ言葉つきだした」 第二十五章 アクセントの問題 これはぼくと同姓の言語学者に聞いたんですが、兵庫県から西、つまり岡山県へ入ると、それらの言葉の[[アクセント]]は、また東京と同じになるんです 言葉に[[上方訛り]]がある