#author("2023-06-24T20:29:38+09:00","default:kuzan","kuzan") [[藤本義一]] 手術(親父はシジツとかシリツと発音した) 親父は死ぬまで、体のことをカラダと発音せずに、カダラといっていた。 おれも無理に[[標準語]]まがいの言葉で、皮肉をいってみた。 運転手は、[[大阪弁]]丸出しでいうのだった。 おふくろが、 「用意出来ましたえ」 と、いつもとは違う[[京都訛り]]で二人を誘った。おふくろは緊張したり、他所へ行った場合は、[[大阪弁]]よりも[[抑揚]]が[[語尾]]にある[[京都弁]]になるのだった。 おれは老婦人は[[大阪弁]]を使うのがごく自然ではないかと思っていたわけだ。 大阪弁ではない[[標準語]](中には[[東北訛り]]の人もいたが)でいわれると、妙に悲しくなっていくのだった。 方言の妙味が満ち溢れているような気がする。 親父は、水を求める時、少し喘ぐように、ミルといった。ダヂヅデドはすべてラリルレロという発音になっているのだ。 「うん、おかげさんで……」 と親父はいうのだ。この言葉を口にする時、親父は上機嫌であった。商人同士の挨拶の名残なのだ。 「ボチボチな」 といった。これも[[商人言葉]]である。