田中英光
小説
https://www.aozora.gr.jp/cards/000126/card669.html
あなたの言葉は田舎の女学生丸出しだし、
どうせまた、嘲弄されるとおもいましたが、知らん振りもできないので、近よると、「おい、さっき中村がお前のことを、ボンチと呼んでいたが、あれはお前の綽名か」とききます。「さアどうですか」と白ばっくれるのに、「どういう意味か、知ってるか」とニヤニヤ皆と目くばせしてから、尋ねます。関西弁で、坊ちゃんという事じゃないですか、と正直に答えようと思いましたが、また反感を買ってもと思い、「知りません」と些かくすぐつたい返事をすると、横から、東海さんが、大声で、「あれは関西で、白痴のことを言うんだよ」と言えば、沢村さんも、「そうとも、ボンチはつまりポンチと同じことじゃ。阿呆のことをいうんだぞ」と大笑い。と、森さんが、したり顔で、「ああ、それで解った。女の選手達が、大坂のことをボンチとか、ボンボンとか呼んでいるのは、そういう意味か」と、言えば、松山さんも荒々しく、「大坂よ、お前は惚れている女から、いつも馬鹿と呼ばれているんだぞ」と罵り、そこで皆から、ひとしきり嘲笑の雨。
日本人のコックさんが、広島弁丸出しの奥さんと一緒に、すぐ、久し振りの味噌汁で、昼飯をくわしてくれました。