横溝正史 小説
名琅荘はいつのころからか、迷路荘と訛ってよばれるようになっていた。
田原警部補と速記係の若い屈強の小山刑事は
タマ子の供述を速記していた若い屈強の小山刑事である。
小山刑事は速記録を引っ繰り返していた。
自分が子供のころにはアリバイなんて言葉はしらなかった。そういえば少年時代読んだ翻訳探偵小説では、現場不在証明とかいてアリバイと振り仮名がふってあった。いまではこういう小僧っ子でも、アリバイという言葉をしっている。探偵小説の影響もまた甚大であるというべきである。