#author("2020-11-04T23:56:36+09:00","default:kuzan","kuzan") 逢坂剛 >> それほどの年でもないのに、言うことが時代がかっている。子供のころ、東映のやくざ映画を見すぎたのかもしれない。東京の下町言葉に、関西方面のアクセントが交じった、奇妙な語り口だ。 << >> 言葉遣いはていねいだが、凄みをきかせた口調だった。赤星元一と話したときの、横柄な口の利き方が、耳によみがえる。 << >> 言葉遣いは詰問口調だが、顔を見ているとそうは聞こえないところが、実はくせものなのだ。 << >> 「節度だなんて、けっこう岡坂さんも、古い言葉を使うんですね」 「古いかね。節度が死語になった、という話はまだ聞かないが」 さぎりは、きょとんとした。 「シゴって」 顔を見直す。 「冗談だろう」 さぎりは少し考え、すぐに眉を開いた。 「あ、分かった。ひそひそ話のことね」 どうやら広告業界も、さぎりくらいの世代では《死語》そのものが、死語になったらしい。 << >> おじさま族か。古い言葉だ。それでだいたい、世代が分かってしまう。 << >> かすかに、関西訛りがある。 << >> 前に会ったときも気づいたことだが、話すときのイントネーションに、わずかな関西訛りが感じられた。 <<