中山義秀
芭蕉はおなじ塩釜の宿で、盲法師の弾じる奥浄るりを聞いている。奥浄るりは近松門左衛門以前の古い浄るりの一種で、古浄るりがほろんでしまった後も、お国浄るりとして仙台地方にのこされていた。奥州下りの義経や弁慶のことなどを、三段から五段、十段にもひきのばして、おもな語り物としている。それだけ人気が、あったわけである。 語り口の調子は低く長く、発音に奥州訛がひどくて聞きづらいが、文句の意味はわかる。それで後の狂歌に、これを評して。 笑ふなよこれもお国のなまりぶしだしにならずも味ひを聞け