中村隆資
『文学界』51巻2号(1997.2)

 判官殿は少し反っ歯の歯を剥いて、馴れた京言葉でやんわりと、萌黄縅の「与一」に命じねばならない。
 「どうや、宗高? 彼の扇の真ん中を射て、平家の奴らに見物させてやらんか?」
 緋縅の「与一」には同じ京言葉でも厳然と命じねばならない。

お命じ下せえ」と、だん可言葉で深く言い切らねばならない。

半身の口を開いて下野訛りでお答えせねばならない。


トップ   編集 凍結 差分 履歴 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2024-04-25 (木) 15:41:05