今東光

水戸訛りのあった剣客の面影を忘れることが出来ないでいた。

渡り歩いた商人の信州訛りが永々と聞える

 「私、日本ムスメ、好きあります。日本ムスメ、キモノ、富士の山……みんな好きあります」
 ハリスはそれを外交的な修辞と思っていたのではない。片言ながら日本語をあやつって、酒が云わせる本心だった。

二人の言葉に争われない薩摩訛りがあった。

訛りだらけの江戸弁で云った。

伊牟田尚平はその陣立を見渡すと、お国訛りを丸出しにして、

恐ろしくぞんざいな巻舌で云い出した。

奥州訛りの沖田さんは剣術の麒麟児という方でしょうね。

出羽国庄内藩士で、その重厚な訛りもまた一種の威厳あるかに感じられた。


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Last-modified: 2023-06-25 (日) 16:00:37