円地文子
九州訛が独特の魅力になっている綺麗な声で話し出した。
音の軟かい京訛を隠そうともしない言葉つき
舌の少し短いように聞える甘えた声は実は歯の抜けた口から洩れる瞹昧な発音なのだ。
根岸って、旗本の下屋敷だの大町人の寮だのあって、とても優美なところだったんですってね」 「優美か……洒落れたところと言って貰いたいね」 「厭だ、叔父さま……すぐ言葉咎めするんだもの……」