北森鴻 小説
話だけを聞くと、東北訛りの強い、少々気の短いところはあるが、根は正直な男に思える。 だが。 と、原口は密かに首を捻った。高橋の年齢はせいぜい高めに見積もっても三十二、三歳か。地元にいるときはともかく、こうして都市部に出てきたときにはふつう標準語を使おうとするのではないか。三十年前ならいざ知らず、情報網の発達した現在では、地方にいても十分に標準語に接することができる。そこに、なにかしらの作為を感じないでもなかった。