https://www.aozora.gr.jp/cards/000311/card2011.html
泰造は米沢に生れて、イとエの発音がさかさになることがあった。字でかけばちゃんと書いたが、発音では逆になった。
自分一人だけの東京弁を居心地わるく感じながら、
伸子にはアルのきつく舌を捲き上げる発音がうまく出来ず、首をふるように力を入れていっても、それはエルに近い柔かい音にしかならなかった。(ロシア語)
「何だって——ピヨン、ピヨン?」
ヨをピと同じ大きさで発音している前に、[…]
「ピヨン、ピヨンて——なんのことだろう」
「ヨをちぢめて飛ぶのよ」
その男は秋田の訛《なまり》のある東京弁で、
南国の訛を声にひびかせながら、玄関に立った。