宮本百合子
祖母は若い時処々を歩いたのでいろいろな言葉を使う。けれ共小作人を叱る時、商人の悪いのを怒る時はきっと東京弁を使った。 ここいらでは東京弁を使う人には一種異った感じを持つ様な調子の村なので句切り句切りのはっきりした少し荒い様な東京弁は、小作人などの耳には、妙に更《あらた》まる気持を起させるのであった。
「御ともさん」は東京弁と、此村と山形――米沢の言葉をとりまぜた言葉でしきりに私に話しかける。