椎名麟三
彼女は、何かもぐもぐいった。関西生れの私にも聞きとれない関西弁でだ。
彼女は事もなく関西弁で答えた。 「新家の叔母はんの家や」
すると美知子は関西弁でいった。 「みんな待ってはるんや、しようあらへんやろ」 何かがちがって来ていると私は思った。関西弁をつかう彼女には、ナイフでもなめた味気なさと自尊心のつよさといったものが感じられたのである。
私は急いでわざと関西弁でいった。 「そこらちょっと散歩して来ま。朝御飯、要りまへんさかいに」