横溝正史
小説

獄門島にたった一軒しかない床屋の親方の清公は、横浜に長くいたというだけあって、江戸弁が自慢らしかった。しかし、その江戸弁たるや、金田一耕助の東京弁同様、はなはだ怪しげなもので、多分にスフが入っている。

舌たらず標準語も、いかにもしゃべりにくそうで気の毒だった。

俳人特有のひねった文字は、さながら、五月雨の泥をのたくるみみずの跡のごとく、尾頭定かならずで、いっこうちんぷんかんぷんである。


トップ   編集 凍結 差分 履歴 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2024-06-26 (水) 08:16:14