野村雅昭編
『講座日本語の表現2 日本語の働き』
筑摩書房
1984年2月27日
とびらエッセイ 書くこと、話すこと 上田三四二
1 素材としての日本語
素材としての日本語 野村雅昭
ことばは道具か
ことばと意志
素材としてのことば
ことばの普遍性と特殊性
ことばを比較する
日本語らしさとはなにか
音声の単純性
文字・語彙の複雑さ
語感と字感
2 音声と文字
発音から話術へ 水谷修
正しい発音、豊かな発音
音声の二つの機能
ひとつひとつの音節の音の姿
母音
舌の位置
唇の形
ア音に見る表現効果
唇の音の周辺
二つの「マ」音
歯茎の音の周辺
さまざまな「サ」音
その他の音
強くなりすぎる「カ」行
ガ行鼻音 撥音の「ン」
息と声と鼻音化
発音に伴う息の量
有声と無声
鼻音化
語や語句の音の姿 アクセントの周辺
音の高さの相対差と絶対差
アナウンサーとサラリーマンの場合
高さの要素と強さの要素
高さの推移
強弱の変化
文や文章における音の姿
卓立と文の切れ目
四つの調子
語句連結のなかの卓立
卓立の形と文の意味
文における卓立と心情表現
文における音の姿
個々の音へ、の影響
文のはじまり、文の切れ目
声の高さ、音調、声止め
おわりに
日本人らしい発音 その特徴と問題点 杉藤美代子
はじめに
平安時代の五十音図
日木語の音節、「拍」
日本語の母音と子音 五十音図の音声学 音声のマトリクス 日本語の拍
子音と母音の分離
言語中枢での操作
発音時の舌の位置
外国人の聞き取りにくい音、発音しにくい例
ザ行音・ダ行音・ラ行音の特徴
ザ行とダ行の混同
日本語と英語の発音
ラ行の発音
特殊な拍のこと 長母音と撥音及び促音
拍の区切りと持続時間
「ん」のさまざまな発音
音のない促音
日本人らしいアクセントの発話
日本語の文アクセント
日本語と英語のアクセント
東京と大阪のアクセント
日本人らしい英語
むすび
文字の性質と使い方 平仮名・片仮名・句読点の役割と用法 佐竹秀雄
はじめに
漢字と平仮名の役割
二つの見方
分かち書き
望ましい表記法
平仮名で書くことば
平仮名表記の基本
表音的表記
片仮名の用法
どこで用いられるか
一般的な用法
注目すべき用法
句読点の用法
符号の種類
句読点
句点
読点
読点を打つ条件
おわりに
漢字の基礎知識 靏岡昭夫
漢字の数
漢字はいくつあるか
字典の漢字数
文芸作品などで使われた漢字数
常用漢字表と当用漢字表
学習用漢字
人名用漢字
日本工業標準規格の漢字
漢字の読み方
漢字の音と訓
中国から渡来した音のいろいろ
呉音
漢音
唐音
呉音・漢音・唐音の比較
慣用音
漢字字典の引き方
字典の漢字の並べ方
部首
意味による部首
形による部首
字典と索引
字体と書体
III 単語の性格
漢字にささえられた日本語 野村雅昭
よそおいとしての漢字
人名のよみかた
地名のむずかしさ
語形のゆれと漢字
あて字の心理
束縛からの解放と反動
漢字は表語文字である
表語文字の機能
表語文字としての漢字
漢字は意味をあらわさない
意味によるかきわけは可能か
漢字の機能
漢字の役割
文字列の分割
同音語の識別
漢字の造語力と語彙体系
漢字の将来
ことばのニュアンス 前田富祺
はじめに
ことばのニュアンスの種々相
「どちらへ」の意味
ニュアンスと語の辞書的意味
「さようなら」のニュアンス
文字・表記のニュアンス
ニュアンスと語感
ニュアンス
語感の位置づけ
類義語の中の語感
語感の種々相
伴示的意味
語感と言いかえ語
位相語彙の語感
文体と語感
おわりに
ことばを選ぶ 尾川正二
一
ことばの命脈
動くことばの実例
俗語と文体
二
感性が先走っての誤用
漢字感覚欠如の誤字
自動詞・他動詞の混同
同音異義語の書き分け
漢字とかなのバランス
三
代用漢字の問題
二通りの書き分け
四
「体験」と「経験」
「文化」と「文明」
五
「渋い」の意味構造
文脈の中のことば
IV 文の働き
用言のはたらき 表現性という観点から 森野宗明
はじめに
動詞の拘束性
喚情性に富んだ動詞
降雨現象を指す動詞
「夕立」をめぐる諸解釈
時間性「夕立つ」と「しゃちくる」
同型の動詞化
「降る」と「夕立つ」「しゃちくる」
「降る」の意味輪郭
限定と非限定
有徴の動詞と無徴の動詞
有徴と無徴の関係・対立
「さえずる」と「なく」
喚情性の強い動詞
サダハルとヨコイル
古典語他動詞の特殊な用法
「雨やめて」の用法
「しつむ」の用法
情意を表す形容詞
藤原俊成の主張
異化効果
文の組み立て SOV構造と〈たちば〉 奥津敬一郎
日本語の文の構造
客観的事柄と主観
主題と陳述
かかり・うけ
日本語の三基本文型
自動詞文と他動詞文の対応
自動詞と他動詞の対応
視点
無標と有標
複他動詞と単他動詞
接尾辞と起点格
授受動詞文
「くれる」と「もらう」
使役文、「〜てもらう」文、受身文埋めこみ構造
尊大使役と謙譲使役
恩恵の受身と被害の受身
間接受身と直接受身
受身化
動作主と受動者の〈たちば〉
非情の受身と有情の受身
非情の受身非固有説
古語における非情の受身
〈たちば〉の有標性
主語固定の原則
中立的・客観的視点
受身文、自動詞文、「〜てある」文
補語と補助動詞
動作主の消滅
文末の表現 柳父章
話しことばの文末語
日木語の特徴
終助詞と接続助詞
聞き手を予定する文末語
「文」とは荷か
聞き手を予定した「文」
話しことばを継承する文体
語り物の文体
近代の書きことばの文末語
新しく造られた文末語
言文一致の功罪
文末語「デアル」の効果
二つの機能
西欧語の連辞に似た「デアル」
過去形、現在形の文末語
「タ」の翻訳的な機能
翻訳に由来する現在表現
新しい「言文一致」を
V ことばの森
ことわざの世界 白石大二
消えてしまったことわざ
「ことわざ」の語義、ことわざの由来・ねらい・働き
直接的表現に代わることわざ、ことわざに頼る表現
ことわざの型
現代に生き続けることわざ
方言の香りということ 川崎洋
いとしい母国語
方言には床しい古語が息づいている
感覚を細かに形容し分ける
愛用したい表現
方言ならではの表現
ユーモラスな言い回し
漢文の遺産 鈴木修次
一
朗誦の時代
訓読のリズム
二
朗読不可能な文体
生きている漢文の伝統
三
心到・眼到・口到
念書第一
聴覚伝達の文明
話芸の味 榎本滋民
伝統的話芸の世界
落語の「枕」
文楽と志ん生
「間」は「魔」
落語家円生の生理
落語独特の省略・飛躍
口調の速さと芸のうそ
電波の世界 米田武
〈全国の皆さまお早ようございます〉
マイクロホンの話法
定型のアナウンス表現
〈悪くすると雨が降るでしょう〉
放送局の舌禍
聞き耳を立てる表現
〈祭りは常に古式ゆかしいのか〉
マスコミのきまり文句
感覚的表現と美文調
〈話すためのことばと文章〉
専門店からデパートへ
歳時記の季節感 平井照敏
西洋の歳時記
季語と季題
「春雨」の本意
季題の季節感
季題のはらむ世界
詩語としての季題
筆者略歴
装幀 向井周太郎
協力・西野博昭