今東光

今時の人は、ごえら屋といっても知る人が少ないかもしれないが、河内では石炭屋のことをごえら屋と言ったもんだ、五平太が訛ってゴエラと称するのだ。五平太とは言うまでもなく九州遠賀川のほとりで最初に石炭を発掘した人物で、若松港から積み出された石炭が安治川口に運ばれ、九州男が石炭の代名詞に五平太と呼ぶのが、いつとかく大阪の沖仲仕に伝おっているうちに五平太がごえらに転訛したものだろう。

あくる八月一日は地方の方言で「らくさく」と言っている。どんな字を当てるのかわからない。八朔の訛ったのでないことは明らかだ。「らくさく」というのは彼等のドンタクの意味で、一日中、休むのだ。

和尚は東京弁河内弁とが、ちゃんぽんだ。

言葉に[京訛り]]がありまして、笑うと好え声だした

ジョン公と犬みたいな名で呼んだが順吉というのが本当の名で、河内訛りで呼ぶとジョンになるのだ。

タンカだけは呂律の迴らない河内訛りで大きな声を発するという厄介者だ。

角川文庫解説 十返肇
この笑いを効果あらしめるのは独得の河内弁である。大阪弁に似ていて、もっと滑稽な感じがする。


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Last-modified: 2023-06-25 (日) 15:50:57