大原富枝
一週間の滞在でもうすっかり故郷のなまりになった健介は、
夫は故郷の言葉で親しそうに頼んだ。
健介は苗子にききとれないほど流暢に土佐弁でいって
いごッそうは単なる頑固者ともいっこく者ともちがう。東京の言葉に翻訳できる言葉じゃアない。頑固になにか加わるんだ。体臭的なニュアンスがあるんだ。
彼は無意識に土佐弁になって悲鳴をあげるように叫んだ。
関西系の言葉の丸みが、乱暴な怒鳴りようにもかかわらず、一種のんびりしたのどかさと滑稽さを苗子に感じさせることもあった。