大江健三郎
「勇ましいわね」とむしろ憤然として助手はいった。その言葉は一種の流行だった。ぼくらの大学の学生はみんな《勇ましさ》から遮断されていたので、ぼくらはみんなその言葉を歌のようにたびたび口にのぼせていた。