山本周五郎
https://www.aozora.gr.jp/cards/001869/card57574.html

こうみえてもあたしは江戸っ子であると、山形か福島あたりの訛りで云った。私がここで福島か山形あたりの訛りだというのは、「喜世川」にいる他の二人の女性から聞いたので、私自身にはどこの訛りかまったく不明であったが、栄子の云うように「東京のまん中の神田っ子」の言葉でないことだけは慥かであった。(「毒をのむと苦しい」)

語尾の「ねえっ」という尻あがりのアクセントに、私の記憶が呼びさまされた。それは紛れもなく、少年「長」のアクセントであった。少ししゃがれた、まっすぐな言葉つき。すぐむきになり、むきになったことをそのままあらわす独特なアクセントであった。(「三十年後」)


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Last-modified: 2023-06-22 (木) 19:43:58