奈良朝文法史 一冊
山田孝雄著。大正二年刊。序論には歴史的日本文典編纂には記録に表れた語法の變遷を精査せねばならぬと云ひ、次に文法変遷の跡を奈良朝以前より江戸期に至る迄六期に分ち更に各時代の文法資料文法変遷をも略述してゐる。又單語の變遷にも用言・助詞の如く著しいもの、體言・副詞の如く著しからざるものがあると云って本論では奈良朝文法(藤原朝も含む)の研究資料を檢討し限定して、次に語論と句論及び東歌にあらはれた特殊な語法について章段を分け多數の用例を擧げて歸納的に研究してゐる。因にこの時代には文語・口語の區別はなかったと思はれるからその区別をたてないと云ってゐる。本書が日本文法史の起點となるものであり、國語系統の研究に貴重な資料を提供するものである等その價値はこゝに云ふ迄もない。猶「平安朝文法史」の巻末に本書の補遺が載ってゐる、併せ見るべきである。
(亀田次郎「国語学書目解題」)
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序論
策一章 總説
第二章 語論
第一節 代名詞
イ 反射指示
ロ 稱格指示
ハ 稱格に擬せられたるもの
第二節 用言
イ 形容詞
ロ 動詞
ハ 形式用言
ニ 複語尾
一 敬意をあらはす複語尾
二 作用の繼續をあらはす複語尾
三 状態性間接作用をあらはす複語尾
四 發動性間接作用をあらはす複語尾
五 打消をあらはす複語尾
六 豫想をあらはす複語尾
七 陳述の確めに關する複語尾
八 回想をあらはす複語尾
九 現實設想をあらはす複語尾
ホ 用言の本幹と複語尾との接續
へ 複語尾と用言の本幹との接續
ト 複語尾相互の承接
チ 用言の用法
第三節 副詞
第四節 助詞
イ 格助詞
ロ 副助詞
ハ 接續助詞
ニ 係助詞
ホ 終助詞
ヘ 間投助詞
第五節 語構成の大要
一 接辭
イ 意義を示す接辭
一 語の上にあるもの
二 語の下にあるもの
ロ 資格を示す接館
二 外來語
三 語の叢り
第三章 句論
第一節 句の形式及成分
一 句の二體及主要成分
二 句の内包的擴張
三 句の外延的擴張
四 引用語句
五 修辭的副成分
六 成分の結合
第二節 句の組織
一 句中に於ける語の配列
二 成分の組織關係
第三節 句の接合と排列
一 重文
二 合文
三 有属文
四 混合文
第四章 東歌にあらはれたる特殊なる語法