志賀直哉
市の小さい芝居小屋に落語の興行があつた時、或晩出掛けて見た。其中に純粋な東京者が一人混つてゐた。其奴の言葉が、「何々じやけのう」とか、「何々しやんせうのう」とか云ふ言葉ばかり聴いてゐる私には非常に愉快に感ぜられた。