有吉佐和子
耳に聞える言葉にはひどい関西なまりがある。語彙が豊富なだけに、その耳だつことといったらなかった。
容貌や声や関西なまりが前より親しめるものとなった気配がないのは自分でも怪訝だった。
粘るような関西弁であった。
昔は意識して抑えても隠せなかった紀州なまりを、垣内吉楠はもう全く野放しにしていた。