獅子文六

「前の三人連れが、声高く、大阪弁を蒔き散らす。」
「思う存分、大阪弁でおしゃべりのできる時間は、もう終った。」
「入口に、全国食堂品川営業所という木札が、薄汚れて、掛っていた。その木札を見ただけで、娘たちの大阪弁は、標準語に切り替わるのである。」


接客係りの諸嬢たちは、車内においては、一切、方言の使用を禁止されてる。
 彼女たちの誰も、志願の最初は、営業所内の訓練所で、皿の運び方、飲料の注ぎ方を教えられると同時に、標準語の教育も受けるのである。しかし、この方は、ラジオ・テレビの普及で、諸嬢たちも、東京の流行語まで知ってるので、進歩は甚だ速いらしい。

「地金の大阪弁」
「わざと、大阪弁を使った」
「言葉も、ハッキリした東京弁だし……。」
「食堂車の娘たちも、同じ気持で、同じ関西弁で、気軽く、話しかけることができた。」
「語調は、純粋な東京弁であり、オキャーセなまりは、どこにもなかった。」
「漫才の口調を真似て」


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Last-modified: 2024-02-19 (月) 11:53:32