田辺聖子
芥川賞全集6
彼女のことばも、いやみなところはちっともない……阪神間の高級住宅地で使われる、関西ふうな柔らかみを帯びた標準語で育ってきたことがしのばれる
ぼくは、どんなムードもことがらも、たちまち冷血な卑俗の水をぶっかけて熱をさましてしまう、あの大阪弁の、嘲笑的な明快さを好んでいた。
彼女には早熟な女学生か、もしくは自分でもしらずしらずのうちに、あどけない口調を採用している、ヒネた老嬢のようなカマトト趣味があった。