發字便蒙解は水戸守山の藩主源黄龍公が命によりて成りたもの。發字とは上記正義に「字に數音あれば義を観て點發す」とあるもので義によりて聲の轉するのを示す圏發で有る。公が之を類集せしめて一書となされたは元文の末(二四〇〇)らしいが再板に増補し、戸崎允明が両君の命によりて更に校正したのが此の書で安永五年(二四三六)の刊。たとへば丁の字はヒノトアタルの時も木を伐る聲の時も平聲、合の字は合フの時も合ハセルの時も入聲だが、倶に下の場合(聲が變る場合には本音で無いのに)にのみ圏發することになつて居る事を明にしたもので巻首には畫引の索引が有るなど親切に出來て居る。
 この書には新訂發字便蒙解といふも有る。廣部精の明治十二年の撰で字を増し且つ各字に韻を標して無かつたのをも補ったもの
(岡井慎吾『日本漢字学史』)


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Last-modified: 2022-08-08 (月) 10:03:01