訛の多い方言でぽつりと答えた。
この婦人は難しい方言と、赤くただれたその眼とで私をおびやかした。
その話は聞き取りにくかったし、嫂が通訳したが、それも方言が多くて彼女にはよく分らなかった。
難解な方言だということもあったし、巫女の声が一種の不明瞭な発音だということもあった。
私は強いてこういうことを考えていた。巫女は方言しか喋らないのだから、標準語しか知らない霊を喚び出したらどういうことになるのか、などと。私の昔の恋人は、訛はあったが、私に向って標準語以外に決して古里の方言を囗にしなかった。
これは私の生れた方でうたう子守唄だよ。訛の多い唄だから、私の生れたくにがこれで分ってしまうといったものだな。