花登筐
小説
関西方言会話
「おいでやす!」/ 京都弁の柔かい言葉に迎えられて
そういえば、清子の言葉に、関西訛がなかった。
「まんだ、始まる時間になってないだがねえ」/ ひどい東北訛りを東京弁になおして言った。
東北弁独特のタ行がすべてツの発音に聞こえるのが奇妙だったが、
猛造を外交と知ってか、この小僧の東北弁は益々、ひどくなる。
「そりゃ光栄だす。毎度おおきに」/ なんと、この女は関西弁で答えたではないか。/「あんたも、関西でっか?」/猛造が嬉しそうに言うと、/「いいえ、うちには、上方のお客が多いんですよ」/女は、もう東京弁でしゃべっていた。
関西弁を使ったことに親しみを持った
一見、剣道の先生のような胸を張り、いかつい体格のこの主人の口から、何ともいえぬ柔らかい京都弁が出るのだから、猛造はいつも、勘が狂うのである。
猛造がそれ以上、言えなかったのは、この甚左衛門の威風堂々たる姿と、さっきまでなよなよと喋っていた京都弁も姿を消し、まるで乃木将軍のような貫禄があったからである。
流暢な京都弁が、いかにも京都の家の落ち着いた家庭の主婦を現わしていた。
子供達が沖繩訛りの強い言葉でそう言ったのであろう。
関東訛りの軍曹は、時代劇に出て来る田舎のやくざの親分のように、どすをきかせた声を洞窟の中で響かせた。
奇妙なアクセントの日本語でしゃべり出したのには驚いた。/「私ハ、アメリカ陸軍、ジョージ田中デス」
早口で喋る猛造の関西弁は、日本人が聞いても関西以外の人間ならわからぬだろう。
早口の関西弁はわからぬらしく、
言葉さえきちんと喋れたら言うことなしだが、何せ言葉だけは福井弁と大阪弁がごちゃまぜで、軍人言葉ではなかった。
パーチーなる発音の誤りはあったが、
「オメデトウ!」「ヨカッタネ」/ 二人が、片言の日本語で猛造を祝福してくれた
日本語が、半分ほど解るジャック・小早川なる二世
その言葉も、関西の訛りは少なかった。
凄むときに言うやくざ口調
まるで、憲兵か警察官のような口調