花登筐

 「おい、僕にまだ電話はかかってきいへんか」
 と初めて囗をきいた。関西弁である。

一人は関西弁、その男は東京へ来ると寄るんです。

「おおきに」
 男は関西弁で礼をいった。

「お金はいらないわ。じゃあ私、銀座に慣れますたい」
 思わずお国なまりが出るほど強くいい切って、由子は銀座のバーヘとびこんだ。

 「それで、一日二万円どすの?」
 日本調が京都弁でのり出した。

「名前はいわなかった。電話口へ出てくれって、関西弁でドスのきいた男の声だったぜ」

「ここに、みどりて女はおらんか?」
 男は関西弁だった。

もう一人の男から社長、社長と呼ばれているが、この男、言葉づかいが関西弁であるから、どうせどこか大阪あたりの中小企業の社長だろう。

男は叫んだ。言葉がいつのまにか関西弁から東京弁になっている。

関西弁も、うまいでしょう」


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Last-modified: 2023-07-10 (月) 17:18:53