国語学辞典 矢田部達郎


二語文 (心理)子供が最初に語を発音するのは早い者で八-九カ月、平均一年三カ月ごろであるが、その時分の単語はだいたい文の役割を果すから、それを一語文と言う。それから、かなり長い期間の後に二語を連続して同時に発音することができるようになる。二の期間にも個人差があつて、五カ月ないし十二カ月と言われる。これを二語文と言う。二語の連続には種々の型があるが、まず「ウマウマ」「ワンワン」等は一語であって二語ではない。「バッチ・キタナイ」のごとき同義語の反復も比較的早く現われるが二語文ではない。「力ーチャン――ボーチ」というのは母さんよ帽子をかぶれという意味であり、「イヤイヤ――オカチ」というのは寝るのはいやで、その前におかしがほしいという意味であるから、これらはむしろ一語文の連続であって、これもまた真の二語文ではない。そして、この一語文の連続の方が概して二語文よりも早く現われる。真の二語文は「ミカン・チョーダイ」「オバチャン・オカシ」(おばさんがおかしをくれた)「カーチャン・イコー」(母さんと散歩に行こう)等のような比較的関係の深い二語の結合でなければならない。これを言うのはだいたい一年六カ月ごろから可能になる。          〔矢田部達郎〕


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Last-modified: 2022-08-08 (月) 08:43:30