http://www.let.osaka-u.ac.jp/~okajima/uwazura/syomokukaidai/wa/kaidai_wa022.html
http://blog.livedoor.jp/bunkengaku/archives/26290598.html>
倭字古今通例全書 わじこきんつうれいぜんしょ 語學書 八卷四冊
【著者】橘成員
【刊行】元祿九年八月。元祿八年秋自序、同九年三月 薄保春の序、同九年春 伴益敏の跋がある。
【内容】假名遣の法を記した書で、同じ著者の「假名字例」(四卷.延寶六年刊)を増補訂正したもの。初めに「假名凡例」として、五音五位の圖、七音總括略圖、空海師無同字長歌、諸秘釋以呂波本字等を記し、次に、端い・中ゐ・奥ひ・端へ・中え・奥ゑ・端ほ・中を・奥お・わの字・はの字・うの字・ふの字・むの字等の用法を概説し、次に假名體用、通用の假名、志知須都の濁音、返音訓、爲持をモタセ、閑翁をオキナサビと訓むの類、變通等について述べ、次に總論とも云ふべきものがある。漢字及び悉曇の起原、以呂波歌は弘法大師の作である事、假名遣の書としては行阿假名遣が濫觴であるが.これは誤りが少くない事、記紀・萬葉・古今集等古書の假名遣は混亂してゐて假名遣の證據とは爲し難い事。言語は風土に依つて異るもので.日本語は印度や支那とは音韻組織が同じくないことを説いてゐる。次に本文に入り、假名の誤り易い語を、いろは順に列擧し、その下に漢字を擧げ、解釋を加へてゐる。なほいろは等の各項毎に所収の語彙を、
(一)乾坤(天象・地形・家屋・名所)、
(二)気形(鬼神・人倫・支體・獸・鳥・魚・蟲)、
(三)生植(木・草.果・菌).
(四)服器(衣類・食物・藥品・用具)、
(五)雜事(言語・祭事・官位・氏姓)
の五種に類別してゐる。所收の單語数約三千に及んでゐる。
【價値・影響】本書は.書名こそ明記してはゐないが、本書より一年前に刊行された契沖の「和字正濫鈔」(別項)に對して、その古書に基づく假名遣主義に反駁を加へたものとして名高い。即ちその總論の中に、「かなつかひの法往古いまだ不定.日本紀より三代實録までの國史・萬葉集・新撰萬葉・古語拾遺・舊事紀・古事記・延喜式・和名抄・古今和歌集其外家々の集のかなよみこゑとりまじへ、又はをおえゑ等亂てあり、今かやうの書を假名の證據とさだめがたし」と云ひ、又「近年かな遣の書あまた出たり、或は雜淆し、或は古書を證據にたて、愚昧のたしかにおもふやうにしなせり、徴とするにたれりとおもふらめ、一向かなを不知ゆへなり」と云つてゐる。契沖は.この書を見て「和字正濫鈔」を反駁したものと認め、本書に對して痛烈な反駁を加へた。「和字正濫通妨抄」(五巻. 契沖全集卷七所收)がこれである。後、「通妨抄」の駁撃の程度を緩めて「和字正濫鈔」の説を訂正したのが「和字正濫要略」(二卷.契沖全集卷七所收)である。然らば、本書の主義は何かといふに、總論のところで、「假名文字遣」にも混亂紕繆少くないことを指摘した後に、「畢竟かなつかひの法往昔いまだ不定」と述べてゐるので、本書の所説は先行假名遣書の影響を離れて、著者獨自の見解より出たもののやうにも解せられるが、實例から見ると.所謂定家假名遣と一致するところが少くない。而してその根本主義を説明した言としては、「假名の法は平上去入の四聲にしたがひてさだまりぬ 中國にては經傳皆韻にして沈約神珙 唐元和の陽寗公 南陽釋處忠等四聲字法を專とす經傳の叶韻といへども今の法則としがたきものあり なんぞ舊記になづまんや只理の正道にしたがひて可也」といふのを見ることが出來るが、その意味するところは明かでない。内容を檢して見ても何を根據としたものであるか不明であり.また所々に「口傳」又は「傳」等と記したものがあつて.祕傳を重んじたことが知られるが、この祕傳なるものがどんな内容を持つてゐたかは、今に至つては知るよすがもない。併し後世の人々は、多く上記の一文に據り、本書は四聲によつて假名遣を定めることを主張するもの(所謂語勢的假名遣)と認めたやうである。(「和字正濫鈔」參照)
〔龜田〕
倭字古今通例全書 八巻四冊。
橘成員著。元祿九年刊。本書も亦「定家假名遣」を基本として所謂語勢的假名遣の法を記せるもので、同じ著者の「假名字例」(四巻延寶六年刋)を増訂したものである。所収の語彙は乾坤・氣形・生植・服器・雜事に類別して約三千に及んでゐるが、注意すべきことはその総論の中に於いて明示しては居ないが、本書より一年前に刊行された契沖著和字正濫鈔の歴史的假名遣を反駁してゐる事である。契沖は本書を見て自説に對する反駁と認めて「和字正濫通妨抄」を著して痛烈に之に應じた。後「通妨抄」の駁撃の程度を緩めて「和字正濫要略」を出した。實際本書は語勢的假名遣を説いたものゝ中では最も整ったものではあるが、語勢的假名遣そのものが餘り學術的價値の高いものではない。然し乍ら當時の學界は未だ契沖の説より成員の説に傾いてゐた。(和字正濫鈔參照)
(亀田次郎「国語学書目解題」)http://www.let.osaka-u.ac.jp/~okajima/uwazura/kokusyokaidai/w/kokusyo_wa025.html>
和字通例書八巻 橘成員
古今の假名遣によりて、契沖の『和字正濫抄』を評駁したるものなり。契沖の「和字正濫要略」は此の書を更に辨駁したるものなり。
和字通例書 八巻 橘成員
古今の假名づかひを混雑して、契沖の和字正濫抄を難じたる書也。契沖此難を辨ぜんがために和字正濫要略をあらはせり。群書一覧
hr>
前田富祺「『倭字古今通例全書』の時代的意義」 http://api.porta.ndl.go.jp/ndlopac/cgi-bin/ndlopac/ndl-book?kywd=83000710
http://ci.nii.ac.jp/naid/110000438759/
http://ci.nii.ac.jp/naid/110000107666/
http://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/html/ho02/ho02_00566/index.html
勉誠社文庫 http://webcatplus-equal.nii.ac.jp/libportal/DocDetail?txt_docid=NCID%3ABN04877971
るすゐ 留守居
るらう 流浪
るいえう 類葉