安岡章太郎
小説
土佐弁会話


運転手はラジオを止めると、ゆっくり信太郎の方をふり向いた。そして、殊更のような大阪弁になりながら、「ははア、これでっか」と、自分の頭を指した手を空で二三度ふりまわすと、


家と学校とで言葉をつかい分けることは何と重い負担だったろう。せっかく憶えかけた新しいアクセントの言葉で話していると、大学生の従兄がやってきて、「おっと、信ちゃんは江戸っ子弁で話しよるの?」と、いかにもオウムの芸当に感心するような口調で云うのだ。


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Last-modified: 2023-07-10 (月) 16:49:34