幸運の手紙の話(日置昌一『話の大事典』)


 西暦一九一九年の第一次世界大戦直後に欧米で行われはじめ、ついで間もなく我国に傳わった。それは或る所より手紙が配達せられ、その手紙を受取つたものは、また自分の交友九人に同様の手紙を出さないと.不幸なことが起るというので、つまらない迷信とは知りながら指令に従うもの多く、ついに警視廳では嚴しく取締の命令を發したほどである。その手紙には「幸福の連鎖」という見出しで「この連鎖を破ってはいけません、この手紙を九枚複寫してあなたの知人で、あなたが幸福を望む人に送りなさい、これはフランス駐在のアメリカ軍大佐から始つたものです、これは絶ゆることなく世界を三週せねばなりません、この贈物を受けて、二十四時間以内にあなたは手紙を出しなさい、連鎖を破ってはなりません、運命に從いなさい、あなたが手紙を出して入口に立つと幸福な出来事があなたを待って居ります、若し出さぬと不幸になります」と書いてある。しかしこうした流行は我国でも昔行われたもので、文政年間に、美濃紙八ツ切に大黒天の尊像を刷り、二枚づゝ配布して、一枚は保有し、夜は再刻して百軒に配れと指令してあったそうである。

不幸の手紙
http://www.aozora.gr.jp/cards/000311/files/3175_10833.html


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Last-modified: 2022-08-08 (月) 10:00:28