陳力衛
『和製漢語の形成とその展開』
汲古書院
2001年二月二八日 発行
目次
序章 和製漢語の概念とその問題点
第一節 和製漢語研究の現状
一 和製漢語の位置づけ
二 和習の発生
三 「変容漢語」の扱い
四 漢語研究史における和製漢語の視点
第二節 和製漢語の範囲と分類
一 和製漢語の外延
二 和製漢語の分類
三 和製漢語の造語パターン
四 和製漢語研究の問題点と課題
第一章 和製漢語発生の素地
第一節 訓読みから音読みへ
一 「訓読み」と「音読み」のせめぎあい
二 音読みによる凝縮の効用
三 和製漢語の産出
第二節 漢字字義の日本的変化
一 訓と漢字表記の意味的ずれ
二 「淋/さびしい」の成立契機
三 「済/すむ」の成立
四 意味の違う「仮」と「恨」
五 「配」の抽象化
六 熟語の意味を代行
第三節 和訓の発達にみる漢字の役割
一 訓点資料における「当・将」の用法
二 「方・正」への広がり
三 和文における用法
四 平安以降の用法
五 漢文用法との関連
六 訓法の簡素化とそれによる造語:
第二章 音韻変化による表記の変容
第一節 同音や類音による異表記の産出
一 異表記と誤用との境目
二 表記変容のパターン
三 抽象概念を表す表記の多様性
四 個別語の語史
第二節 「文盲」考 「蚊虻」との関係を中心に
一 漢籍にない「文盲」
二 和文における「文盲」の解釈
三 文字表記の意味に傾く
四 中国語での活用
第三節 「化粧」考 意味と表記の変遷
一 「けさう」の二つの意味
二 漢文系資料における「俵粧」と「厳粧」
三 『今昔物語集』における「俵借」
四 「懸想」から「けはひ」へ
五 辞書の記述にみる表記の定着
第四節 「喪亀」考 忌み意識による書き分け
一 書記言語における「裏亀」
二 同音語「早帰」
三 忌みによる改字
四 「喪亀」意味の再検討
五 辞書に残らない語
第三章 語構成による和製漢語の産出
第一節 語構成から見る和製漢語の特質
一 『論語』における日中両国語の語構成の異同
二 日本語における語構成の発達
三 並列構造による造語
四 語構成の限界
第二節 副詞による連用修飾の語構成
一 連用修飾を許容する土壌
二 副詞の範囲
三 古辞書の登録
四 個別例の検討
第三節 語構成と出典例とのかかわり
一 出典例との時代差
二 異なる理解の語構成
三 語構成が変化する
四 出典例の意義
第四節 現代語における連用修飾の語構成
一 語構成についての先行研究
二 副詞による連用修飾
三 形容詞による連用修飾
四 連用修飾による造語の特徴
第四章 近代における和製漢語の生成
第一節 新漢語の構成
一 近代漢語の種々相
二 訳語の流れ
三 漢訳洋書と英華字典
四 英和辞典の貢献
五 中国への逆輸入
第二節 明治初期における漢訳洋書の受容
一 明治初期の漢訳洋書の購入
二 柳原前光と中国との関連
三 購入書の内訳と内容
四 日本での所蔵状況
五 いかに利用されているか
第三節 『哲学字彙』における訳語の成立i著者の自筆稿本による第三版の改定・増補を中心に
一 『哲学字彙』の版の流れ
二 第二版に書かれた増補内容
三 第三版に書かれた増補内容
四 用語の定着過程を見る
五 出典つきの訳語を再考する
第四節 近代国語辞典における字音語の扱い方 和製漢語を類別する意識
一 近代辞書の登場
二 「和」と「漢」の意識
三 「和ノ通用字」の内訳
四 山田美妙の「字音」意識
五 『大言海』の限界
六 漢語の層を区分けする
七 その後の辞書における字音語
第五章 現代中国語における和製漢語の受容
第一節 日中同形語の視点
一 日中同形語の形成
二 中国語における和製漢語受容のルートと媒介
三 意味による同形語分類の限界
四 中国語の文法に適応できない和製漢語
五 中国語における和製漢語の意味の誤解
第二節 和製漢語の受容による漢語類義語の形成
一 近代漢語類義語産出の原因
二 「普通」と「一般」
三 「裁判」と「審判」
四 英華・英和辞書による意味境界線の曖昧さ
終章 和製漢語の行方
一 和製漢語の増加
二 和製漢語の未来
付表1 中・日現代漢語対照語彙表にある「日本の文献を出典とする語」一覧
2『漢語百科大辞典』にある和製漢語一覧
3『三省堂国語辞典』(第四版)ラ行における和製漢語一覧
参考文献
あとがき
語彙索引
事項・人名・書名索引