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和語説略圖 語學書 一鋪
【著者】東條義門【刊行】天保四年。天保十三年に増補して、表題も「壬寅補正和語説略圖」としたが、後、内容は天保十三年に増補したものを用ひ、表題は單に「和語説略圖」とした。今一般に行はれてゐるのはこれである。
【内容】著者が丈政六年に刊行した「友鏡」(「てにをは紐鏡」の條參照)を更に整理して簡約にし、詞の活用と手爾乎波の呼應とを圖示したものである。先づ活用形を、將然言・連用言・截斷言・連體言・巳然言・希求言の六段に分ち、これ等の活用言に係る手爾波として、截斷言には「は・も・タヾ」等、連體言には「ぞ・の・や・何」、巳然言には「こそ」とし、これ等の活用言を受ける手爾波として、將然言は「ず・で・め・ん・まし」等、連用言は「ぞ・こそ・や・し・つつ」等、截斷言は「や・と・とも・べし・まじ・なり」等、連體言は「哉・こそ・ぞ・や・か・まで・如し」等、已然言は「ば・ど・共」などであると記してゐる。次に活用の種類を十數種に分けてゐる。第一に「現在」として「無し」と「正し」(形容詞の志活と志久活に當る)。次に過去として「キ・シ」。次に「不」(打消の助動詞)。次に「有り」(羅行變格)。次に「變格活」として加行・佐行・奈行の變格を舉げ、次に下二段活・中二段活(現今の上二段活)・一段の活(現今の上一段活に當る)・四段の活を擧げ、次に「ん・め」「まく・まし・ましか」「んず・んずる・んずれ」の三種(助動詞)を擧げ、而して以上の諸活用を「詞八衢」(別項)及び「友鏡」
と對照してゐる。最後に「因又略示」と記して「無し・正し・將む・有り」の四つについて、前記のものとは少しく異なつた圖を舉げてゐる。
以上が天保四年に刊行した部分である。而して天保十三年に増補した部分は、初めに「和語説略圖」と去ふ題號の謂はれを記し、次に五十音圖を記して、四段・下二段・中二段・一段等の語の意味、活用の形を説明してゐる。
【價値】本圖は片々たる美濃版一枚大の圖であるが。義門の一生に於ける活用及び呼應の研究の精髓であつて、その活用及び呼應に關する多くの著述は、本圖に至る過程を示したもの、乃至本圖の所説を裏付けたものである。而して本圖は活用呼應の研究が始まつて以來、明治初年に至る迄の間に出來たこの種の著述中、簡明なる點、確實なる點に於て、一頭地を拔くものである。勿論「てにをは紐鏡」「詞八衢」(各別項)の類が、本圖の基礎になつてゐるのであるが、義門はこれ等の書を考究して、その足らざるを補ひ、誤れるを正して本圖を作つ
たのである。併し本圖にもなほ缺點がないではない。その最も大なるものは動詞・形容詞・助動詞等の属別をしてゐないために、動詞に於ては「詞八衢」の説を踏襲して、變格活・下二段活等の名稱を附してゐるが」形容詞・助動詞等で動詞とは活用を異にするものには、何等名稱を附してゐない事、又下一段活用を逸した事、又「無し」「正し」等に希求言(命令形)として「かれ」「しかれ」を附けた事(但し「無し、無
き」の活用と「無かれ」の活用.「正し」と「正しかれ」の活用が異つてゐる事は.義門は知つてゐたのであるが.これを同一行に置いた)などである。
【末書】「活語指南」(別項)は義門が平井重民と共に、「和語説略圖」について、條を逐うて講義したもので、略圖を見る者の必ず參照すべきものである。
「和語説略圖聞書」(寫本.義門述)。これに二部ある。一は天保九年六月六日に始めたもので(六日と七日に講じたものと思ふ)、活用の三轉五轉、活用の種類を述べたもの。一は同年同月八日から講義したもので(八日一日、或は翌日にも亙ったかと思ふ)、體言用言の區別、用言の活用等について記したものである。この他.義門の講義したものでは、「和語説略圖演説」二部、「語辭林香記」一部一卷等は、本圖と多少づつ關係がある。
「和語活用略圖」(一鋪、嘉永元年刊)、義門の弟子法雲(別項)が著はしたもので、「和語説略圖」を若干改めたものである。
「和語活用略圖解」(一卷一冊、寫本。嘉永元年成る。法雲著)、上記の「和語活用略圖」の講義を筆記したものである。但し法雲は、初め義門の教を受けたのであるが、後、音義に傾いた爲め、その説は義門とは餘程縁遠いものになつてゐる。         〔龜田〕

http://www.let.osaka-u.ac.jp/~okajima/uwazura/syomokukaidai/wa/kaidai_wa019.html


和語説略圖 一鋪
 東條義門著。天保四年刊。天保十三年追加刊。増補本は「壬寅補正和語説略圖」と表現す。爾後刊行の「和語説略圖」の内容はこの増補本である。詞の活用と手爾遠波の呼應とを圖示したもので、文政六年刊の「友鏡」を整理したものである。天保四年の刊本活用形將然言連用言截斷言連體言已然言希求言の六段に分って それ等活用言に係る手爾波を記し、次に、活用の種類を十數種に分け示し、更にこれを「八衢」及び「友鏡」と對照し得る様にしてあって、最後に、「無し、正し、將む、有り」の四つについて特にやゝ異った圖を記して居る。扨、増補本は右の他に「和語説略圖」と云ふ題號の説明をし、又五十音圖を記して四段下二段中二段一段等の語の意味や活用の形を説明して居る。本圖はこの種の著述中この簡明なる點、確實なる點に於て明治初年に至る迄最も優れたるもので義門の活用及び呼応に關する研究は総べて本圖に至る課程であり、本圖所説の裏付けである。「言葉の八衢」や「てにをは紐鏡」の説で本圖に至って隨分補はれ或はその誤謬の正されたものが少くない。しかし又本圖にも猶不備缺點が取殘されて居る。例へば動詞形容詞助動詞を區別せずに形容詞助動詞動詞と活用の異れるものにも何等の名稱も附して居ないのは「八衢」の不備を踏襲したものであり。又下一段活用を逸した事、「無し、無き」の活用と「無かれ」の活用、「正し」と「正しかれ」の活用の相異を認め乍ら活用圖の上では同一行に置いた事等はその例である。
【末書】
 * 「活語指南義門平井重民と共に和語説略圖について逐條講義せるもの。
 * 「和語説略圖聞書」本書に二部ある。(一)は義門が天保九年六月六・七兩日に活用の三転五転、及び活用の種類について述べたもの。(二)は同八日から體言用言の區別、用言の活用等について講義したものである。
 * 「和語活用略圖」一鋪 嘉永元年刋。義門の門弟僧法雲が著したもので和語説略圖を少し改めてゐる。
 * 「和語活用略圖解」一巻 嘉永元年僧法雲著。自著の和語活用略圖の講義である。因に法雲は後音義説に傾いた爲義門師とは其所説が次第に隔つた。
 * 「和語説略圖演説」「語辭林香記」は共に義門の講義で和語説略図と多少関係あるものである。
(亀田次郎「国語学書目解題」)


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Last-modified: 2022-10-20 (木) 00:21:16