http://www.let.osaka-u.ac.jp/~okajima/uwazura/syomokukaidai/ka/kaidai_ka001.html
呵刈葭
天明年間上田秋成と本居宣長との論爭せる書簡集である。本居宣長全集・上田秋成全集所收。本書は藤井貞幹著「衝口發」の日本古代史に關する所説を宣長が「鉗狂人」を著して反駁したのに對し、秋成が「鉗狂人評」を書いて宣長の説を駁して、以後繰返された論爭集である。國語學に關係あるものは、ん[n]音有無論と半濁音正不正論とである。秋成は古代からん[n]音とむ[m]音が併存したと云ひ、また半濁音は不正ではないと云ふに對して、宣長は[n]音は後世訛って生じたもので、古くは[m]音のみなりと云ひ。又半濁音は不正なりとの説を讓らなかった。この論爭の是非は後に至って、義門の「男信」、關政方の「傭字例」、白井寛蔭の「音韻假字用例」等に於いて[n]・[m]二音は共に古代より有した事が證され、又近くは那珂通世博士・上田萬年博士等によってハ行音が古くはパピプペポと發音された事が證明されて自から解決した。
(亀田次郎「国語学書目解題」)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/933887/35 増補本居宣長全集 6